雨の前の日、ちょっと生ぬるく、霞ががった日。
眺めは期待せず、秋色を感じたくて、御嶽に向かう。
対馬は下島より上島の方が秋の色が濃くなる。
植生のせいであるが、上島の方が赤や黄色に彩られる。
思った通り、登山口近くになると、
赤い紅葉や黄色い銀杏が目を楽しませてくれる。
登山口に着くと、車が一台。
先客ありも珍しい。
御嶽は登りはじめが急坂である。
すぐに体が暑くなる。
登り出すと、時々色が変わった木々が目をひきはじめる。
静かな山だ。風はなく、鳥たちの声もたまに耳に届く程度。
式内社島多国魂神社のお堂について、一息。
静かな階段状の道を歩き、山頂を目指す。
山頂まであと5分というところで、平岳方面から何人もの声が聞こえる。
韓国の登山者か?
いや、声のトーンが違う。
登山口の車の方々かな・・・
と思いながら、山頂を目指す。
誰もいないと思って山頂に上がると、
おっと、5、6人の団体さん。
じゃあ、後ろの元気な集団は何だ?
ドウ坂から平岳を経て来たのか。
ほどなく、後ろの集団が上がってきた。
息もからさず平気な顔の人たち・・・
汗をぬぐう自分が恥ずかしくなる。
なんと御嶽山頂に13人の人たち。
初めての経験である。
しばらくして、はじめに山頂にいた団体さんは下山し、
元気な集団と私だけの山頂となる。
仕事の調査のようでもあるし、仲間と登っているようでもあるし、
しかし、レジャー感はなく、12時の山頂でも何かを食べるわけでもない。
ふと、携帯しているコンパスが目に入る。
レンザティックコンパス・・・目標物に照準を合わせるタイプ・・・そうか。
国境の島対馬、国防の島でもある。
次回の業務のための下見登山だったらしい。
どうりで、体力が並外れているわけだ。
さすがと感心しきりの山頂となった。
元気な団体さんが去り、静かな山頂となる。
ゆっくり昼食をとる。
静かな山である。
下り初めて、式内社島多国魂神社のお堂に着く。
静かな山に対峙していると、何やらサワサワと枯れ葉を踏む小さな音がどこからか聞こえる。
イノシシか?シカか?
しばらくすると、音は明瞭になる。
前方の山腹の下の方から、イノシシの姿が見えた。
私に気づかず、こちらに小走りで登ってくる。
なんと、6頭。
イノシシは用心深い動物で、山で見ることがあっても、
横切ったり、逃げる姿ばかりである。
なのに、こちらに正面を向いて駆けてくる。
こんな姿を見ることは珍しい。
おっ、写真だ!カメラを取り出す。
しかし、カメラを取り出して、電源を入れてシャッターが押せるようになるまで、
私の場合8秒かかる。
10秒も待てば目の前に来そうだ。
カメラに収めたい衝動と、命を守ろうとする本能。
どうする!!!
「おらあ!」
思わず、声が出ていた。
本能が勝った瞬間。
びっくりしたイノシシは、瞬時にきびすを返す。
列をなさずばらばらに駆けてきていたイノシシ6頭は、逃げる時は一列となった。
下に逃げた後、山腹を横に走ったようで、その時見た時も6頭が一列となって駆けていた。
リーダーがいるのか。
冷静になって考える。
やはり声を出してよかった。
10秒待って、直前で気づかれたら、驚いたイノシシはどう動くかわからない。
そのまま突進を選ばれたらおしまいだ。
写真より命。当たり前だが、この価値観が曖昧になる世の中になってきている気がする。
肝に銘じなければ。
静かな中にも、イノシシも合わせて3組の団体さんと遭遇した、
珍しい御嶽登山となった。
|